母校
2013年 08月 15日
誰からしてもそうなのかもしれないが、
僕にとって高校での3年間というものは
これまでの人生で一番大きなターニングポイントになった期間だった。
自分の夢と現実の狭間で苦しみに苦しみ、
息切れしながら半ば逃げ出すようにして僕はあの学校を卒業した。
そういう場所に帰って来られるというのは、
なんだか嬉しくもあり、微妙に辛くもあり。
そんな複雑な気持ちは、「懐かしさ」で全て上書きされてしまった。
学校は、はっきり言って何も変わっていなかった。
もう10年近く経っているというのに、
あそこまで景色が変わらない場所というのもなかなかないだろう。
頭の中だと小中学校の光景などと記憶がごっちゃになっていて、
最初は「ぜんぜんわかんなかったりして」なんて思っていたのだが、
そんなことはなかった。3年もいたのだから当然だ。
同時に、少し寂しさを感じた。
確かに大切な3年間を過ごした場だが、今ここに知っている人は誰もいない。
知っていても「○○君の弟が通っているらしい」程度である。
この場所にいて、自分の友達が、どこにもいない。
不思議な感覚であった。
そんなことを考えていたら、ある部屋から人が出てきた。
見覚えのあるネットに、シャトルが積まれたカゴ。
自分が所属していたバドミントン部の人間だとすぐにわかった。
これも縁だと思い、彼に声をかけて部室を見せてもらった。
部室は、やっぱり何も変わっていなかった。
「懐かしいなあ」などと思わずつぶやいてしまう。
ねずみ色の壁は、僕らがペンキで塗ったものだ。
3年時にラクガキを発見され、先生に「消さなきゃ停学」と脅されて
必死こいて塗りつぶしたものだった。
見ていると、少しだけペンキがはげている部分があった。
よくよく見てみると「S口」「F田」と、同級生の名前が大きく書かれていた。
思わず、大笑いしてしまった。
こんなくだらないものが、一応残っていた。
ラクガキが、10年も僕を待っていた。
紛れもなく、ここは僕らの部室だったのだと思った。
高校時代の自分に言いたい。
君の行動はきっと、間違っていると思う。
でも、その先にあるものは、決して悪くはない。