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ノート その2

納得いかないことがあって、ファミレスに行った。
気持ちのやり場がなかったのだ。ここなら作業にも集中できる。
僕はセブンイレブンで買った黒いB5ノートを開いて、
文章をたくさん書いた。

糸井重里氏によると、行き詰った時、気持ちが落ち着かない時、
心が乱れている時は、思ったことを文章にして書くと
「自分の今の気持ちが客観的に見え、絡まった紐が解けるようにして理解できる」ため、
落ち着くのだそうだ。
僕は半日くらい、ファミレスにこもって文章を書いた。

前にもこんなことがあったなあ、と思った。
高校三年の夏、「勉強合宿」みたいな行事に参加した時のことだ。

この頃の僕は、とてもとてもふてくされていた。
事情は色々ある。女に裏切られた。単純に受験が嫌だった。
「社会」みたいなものが迫ってくる気がして、怖かった。
そして学校の作る枠組みみたいなものに、とにかくイラついていた。
(尾崎豊的なやつ)
でもその頃の僕には、まだそれをぜんぶふっとばせるくらいの胆力はなかった。
だから、わざわざそれに参加してふてくされていた。

僕はかすかな抵抗の証として、参考書の類を一切持ち込まずに着席した。
そして、ノートを開いたのだ。

ああなんだよ、と思った。
俺はあの場所から一歩も成長していないじゃないか、と思った。
色んなことを経験して、たくさん失敗もして
運よく夢が叶ったりなんかしちゃったりして
「この次は新しい夢だ」とか語っちゃって
その上で失敗しても立ち直って
「これも勉強だ」と何でもポジティブに構えることもできるようになって
いけないこと、気に入らないことには「ダメだ」と強く言えるようになって
何度も何度も積み重ねたつもりだったのに、
僕はあの時と全く同じように、ノートに文章を書いていたのだ。

今回納得いかないことも、形は違えど昔のそれと何ら変わりがなかった。
僕はその事実にすっかり打ちひしがれてしまって、
でも、他にできることもなくて、また文章を書いた。

それでわかったのである。
今回納得いかないことはもう「解決しない」と。

前回は違っていた。時間が解決してくれた。
僕は半ば逃げるようにして、それを解決することに成功した。
でも今回は違う。もう、ぜったいに「解決しない」。
時間はもう何もしてくれない。
モラトリアムなんてとっくに終わったのだ。
猶予なんてない。
自分の力で何かできるような類の話でも、ない。

だからノートを破らず、全部受け止めることにした。
突発的に食っちまうか、なんて思ったけれど、消化に悪そうだからやめた。
僕はパスタを食べて、コーヒーを飲んでからファミレスを出た。
多少気分はよくなっていた。

受け止めよう、そう思った。
昔との違いがあるとすれば、ノートを破くか、破らないか。
たったそれだけだった。

この気持ちを忘れないために、あえてこの場に書いておくことにした。
僕は大丈夫だから、どうか忘れておくれ。
by nakayu1105 | 2013-10-21 18:54 | Comments(0)

日頃あったことだとか、ゲームの感想だとか、そういうものを積み重ねていくブログです。 書いてる人/nky(ナカユウ・んきゅ)


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