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ラスト・ウエーブ

引っ越しから3週間ほどが経ち、
ようやく現状の暮らしにも小慣れてきた。

今回はそんな話について書こうと思ったのだが、
前回、埼玉県を出ることになったことを書いてから
とても印章深い出来事が起こった。
もう、けっこう前の話になってしまうが、
今回はその話題について記しておきたいと思う。

5月初旬。
埼玉で最後の一週間を過ごしていた僕は、
すっかりとふさぎ込んでいた。
実は、また妻と離婚するしないの騒ぎを起こしていたのだ。

正直、この話題については
触れても仕方がないので、深くは触れないことにする。
今はもう、こういう芸風だと割り切ることにしている。
まあそれでも、しんどいもんはしんどい。
正直、家に帰るのもイヤになってしまった僕は、
埼玉にいる最後の一週間の帰り道、
妻が寝る時間になるまで
最寄り駅の商店街をふらついていた。

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その中でも一番の癒しだったのが、
古いゲーセンであった。
夏にりゅうさんと遊んだ際、
ハイパ2が稼働してる! と喜んだあのゲーセンである。
この場所は対戦も活気づいていて、
ワンコインでしばらくCPU戦をしていれば乱入が来る。
しかも、プレイヤーも自分と同レベルなので
ぜんぜん勝てねえ、もうやんねー! ともならず
1000円あれば確実に閉店まで遊べる状況。
僕にとって非常に都合がよい環境といえた。

僕はなんだかんだ、スト2が遊べれば割とどうにかなる。
気づけば10年以上同じことをしているが、
年を重ねていくごとに
楽しくなっている気すらするから不思議である。
たまに連勝を重ね、周囲で一番長く席に座っている状態にもなる。
相手が「こいつに勝つの、もう無理だわ」と心を折って
別のゲームに座ってしまうのも何度か見た。
その人には悪いが、これはそこそこ快感である。

思えばハイパ2を本格的に始めた専門時代、
僕は高田馬場でボコられにボコられ、泣きそうになりながら
席を立ったことが何度もある。
(対戦勝率は間違いなく一割を切っていた)
しかし時を経て、僕はそれをやる側の人間になったのである。
人間、続ければ成長するものなのだ。

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そんなワケで、傷ついた心を
なんとか慰めて数日を過ごした僕は
引っ越し前日、このゲーセンを
埼玉時代最後の遊び場に選んだ。
最後の最後までお世話になろうと思ったのである。

しかし店内に入ると、雰囲気が違う。
半分くらいの筐体の電気が消えていたのだ。
見てみると、動いているのはクレーンゲームと
スト2を始めとした古い筐体ばかり。

何かと思って見渡してみると、看板に
数日後に閉店する旨の告知書が貼られていた。

ひどく残念に思うと同時に、
すごく奇妙な縁を感じた。
最後の最後に、ここに呼ばれたのだろうか?
おこがましいかもしれないが、そう思った。

その日の店内は、またスゴかった。
閉店の影響で、ネットに繋がるゲームはすべてクローズド。
(すでに片づけられていた)
おかげで、稼働しているゲームは古いものばかりだ。
ギルティギアも最新作ではなく、古い2D版の対戦が行われている。
ほかにもKOF98やバーチャロンのオラタンなど、
懐かしい筐体の数々。
自分が一番通っていた専門時代を思わせ、
まるでタイムスリップしているかのような感覚を味わえた。
(もちろん当時もネットに繋がるゲームはあったけども)

だが、一点だけとても残念なことがあった。
ハイパ2の対戦台が稼働しておらず、
すべてスト3サードに変わっていたのである。
そしてこの日のスト3には異様な熱気があった。
なんとなく理由は察しがつく。
きっと、このゲーセンではこのゲームが最も流行っていて
これで最後だからと、
これまでの常連たちが集ってきていたのだろう。

最後に常連たちがその思い出に浸り、役目を終える。
これ以上ふさわしいフィナーレはないだろう。

僕は一人用のハイパで何回か遊んで、
別の場所に行くことにした。

呼ばれはしたけれど、単なる挨拶だったのだろう。
対戦できなくて残念だが、まあ、パチスロでも打ちに行こうか。
そんなことを思って店外に向かおうとしたとき、
ある筐体が目に入った。

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「アウトラン2 SP」であった。

僕のことを昔から知る人には、説明不要だろう。
僕が高校〜専門時代、
ハイパ2と同レベルにやり込んだゲームである。
稼働時はどこのゲーセンにもあったが
現在はすっかりその姿を消してしまった。
この筐体を見たのは、実に6、7年ぶりだった。

これまでこのゲーセンに、この筐体はなかった。
だが、この最後の数日。
もしかしたら、ネットなしで動くゲームをと、
お店の人が倉庫にあったものを
引っ張り出してきてくれたのかもしれない。

高校時代の辛い思い出、そして専門時代の
甘いような、酸っぱいような、ちょっと青春っぽい思い出。
ぶわああああっとそれらが一気に押し寄せてきて、
僕はその場で目頭を押さえざるを得なかった。

まさかゲームの筐体を前にして泣くことになろうとは。
まったく自分らしい、バカな光景である。

だが、間違いなく僕はこの日、
このゲーセンに呼ばれた人間の一人なのだろう。
アウトランでドリフトを決めながら、
僕はそう確信したのだった。

実にすばらしい送り出しをしてくれたK市に、
心から感謝したい。
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Commented by ryu at 2019-05-22 23:07 x
粋な終わり方しましたな、あのゲーセン
Commented by nakayu1105 at 2019-05-23 07:37
実に、ですね。
最終日の光景をりゅうさんにも見せてあげたかったです。

ゲーセンにまた救ってもらった。
by nakayu1105 | 2019-05-22 00:10 | ゲーム | Comments(2)

日頃あったことだとか、ゲームの感想だとか、そういうものを積み重ねていくブログです。 書いてる人/nky(ナカユウ・んきゅ)


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